Salesforce で販売管理を始める前に確認することは、商品、仕入、在庫、請求、締め、返品、会計への渡し方の7つの業務です。この記事では、その7つを「Sales Cloud だけでできるか」「ERP Platform for Salesforce で足せるか」「ERP Platform でもできないか」の3段で整理します。

先に結論です。ERP Platform が対象にするのは、商品を仕入れて売る販売業・商社・卸売・小売・EC 運営です。サービス業は帳票の用途で使えます。自社で商品を作る業務の管理(原価集計や加工の記録)は対象外です。

以下は当社が業務の流れに沿ってまとめた確認の目安です。診断結果ではありません。自社の業務に当てはまるかは、トライアルで確かめてください。

まず前提:Sales Cloud が受け持つ範囲

Sales Cloud の標準機能で、商談から見積を作り、見積書を PDF にするところまでは進められます。商談と見積は同期でき、見積は PDF にして保存できます。PDF のテンプレートの扱いは、公式ヘルプで確認してください。

一方、在庫の引当、納品書、請求書、会計仕訳まで通したい場合は、別の仕組みが要ります。ERP Platform は、その部分を Sales Cloud に足すアドオンです。利用には Sales Cloud の Enterprise エディション以上が必要です。Service Cloud のライセンスだけでは使えません。標準オブジェクトの「見積」が必要なためです。

見積までは今の Salesforce で足りていても、その先を表計算や別の販売管理システムで補っているなら、二重運用になりやすい状態です。その線引きを確かめるのが、この確認表の目的です。

商品・仕入・在庫で確認すること

確認するのは次の4点です。

  • セット商品:商品レシピに構成商品を登録すれば、セット商品として売れます。販売側の管理です。
  • 仕入価格:商品に標準仕入価格を持ち、仕入の入力時に上書きできます。仕入先ごとの価格を持ち続ける機能は、現状ありません。
  • 在庫:ロット管理、複数倉庫・複数拠点、組織グループ別の出庫制限が使えます。有効期限の管理は、現状ありません。
  • 外貨:仕入は登録した通貨で扱えます。月次の棚卸のときに平均レートを入れると、円換算の仕入総額が出ます。

在庫の考え方はSalesforce で在庫管理を完結させる実装ガイドに詳しく書いています。

受注から請求・締め・返品で確認すること

ここで引っかかるのは、請求のタイミングと、販売側の通貨です。

  • 請求書:商品すべての納品レコードが作成された時点で、請求書が作成されます。出荷の完了を待たず、納品レコードがあれば発行できます。
  • 締め:取引先ごとに決めた期間で、自動の締め処理が動きます。請求の基準になる締め日を、顧客ごとに変えられます。
  • 返品:赤伝票で処理します。返却あり(返却先の倉庫を選ぶ)、返却なし、廃却から選べます。
  • 販売の通貨:円のみです。外貨建ての販売には使えません。

見積から請求までの流れは見積データを請求書までつなぐ方法、掛率は取引先別の掛率、見積書の作り方は見積書の作り方と標準機能の限界で扱っています。

会計・EC・サポートで確認すること

最後は、外とのつなぎ方です。ここは誤解されやすいので、はっきり書きます。

  • 会計:仕訳は Salesforce 上で自動作成されます。会計ソフトへは CSV で出力して取り込みます。API で会計ソフトと直接つなぐ機能はありません。
  • EC:EC サイトからの受注メールを読み取って Salesforce に取り込む、一方向の仕組みです。別建てのオプションです。帳票の発行は EC サイト側で行う想定です。
  • サポート:メール受付が基本で、必要に応じて Web 会議で対応します。電話は標準ではありません。
  • ライセンス:追加はセルフサービスではなく、当社の担当者を通した手続きです。

部門ごとに見るポイント

確認は一人で抱えず、部門で分けると進みます。

  • 情シス・経営企画:Sales Cloud のエディションが Enterprise 以上か。いまの商品マスタと価格表を、どこから移すか。
  • 経理:締め日の種類、返品の処理、仕訳の科目。CSV の取り込み先の形式に合うか。
  • 営業・倉庫:見積から納品までの流れ、複数の倉庫やロットの使い方、返却先の決め方。

どの部門も、「いまの手作業のどこが減るか」と「減らない手作業がどこに残るか」を分けて見ます。残る部分は、下の「できないこと」と照らして先に洗い出しておくと、導入後の食い違いを避けられます。

判定の早見表

確認項目 判定 補足
見積書の PDF Sales Cloud で可 見積機能を有効にした標準機能
セット商品・ロット・複数倉庫 ERP Platform で可 販売側のセット商品管理
納品書・請求書・赤伝票 ERP Platform で可 納品レコードがそろえば請求書を作成
仕訳の自動作成 ERP Platform で可 会計ソフトへは CSV
仕入先別の単価の保持 現状なし 仕入の入力時に上書きは可
有効期限の管理 現状なし —
外貨建ての販売 不可 販売は円のみ

できないこと・向かないケース

次のどれかが業務の中心にあるなら、ERP Platform は向きません。

  • 原価の範囲:見られるのは、仕入原価をもとにした売上原価と粗利です。自社で作る商品の原価集計は対象外です。
  • 商品を作る業務の管理:加工して別の商品にする処理はありません。ERP Platform が扱うのは、仕入れた商品を売る業務です。
  • 在庫と商談金額を並べるフォーキャスト:標準のフォーキャストはありますが、在庫との連動表示はありません。
  • EC の掛率:EC コネクター経由の受注は、EC サイト側の価格が使われ、取引先別の掛率は効きません。
  • EC 側の在庫更新:Salesforce から EC 側の在庫表示は更新できません。複数サイトの二重販売は、このコネクターでは防げません。
  • 会計ソフトとの API 連携、外貨建ての販売

仕入先別の単価と有効期限は、現状なしです。必要な場合は、お問い合わせからご相談ください。原価と粗利の見方は原価と粗利を商談ごとに把握する方法にまとめています。

まず試すには

ERP Platform には30日間の無料トライアルがあります。本番の契約の前に、Sandbox で試すこともできます。次の3つを確かめると、見送るか進むかを決めやすくなります。

  1. 主力の商品を何点か登録し、見積から受注、在庫確保、納品、請求まで1件通し、仕入と入荷も1件入れて在庫に反映されるか確かめる
  2. 自社の締め日と、返品の扱い(赤伝票)を設定して動かす
  3. 出力した仕訳の CSV を、いまの会計ソフトに取り込めるか確かめる

1件通すときは、いつもの取引に近い商品と取引先を選ぶと、実際の運用との差が見えます。特に3つ目の CSV は、会計ソフト側の取り込み形式との相性が出やすい部分です。経理の担当者と一緒に確かめてください。

料金は月額 2,000 円/ユーザーです。EC サイトコネクターを使う場合は、別に月額 100,000 円/組織がかかります。詳しくは料金ページをご覧ください。

まとめ

  • 見積の作成と PDF までは、見積機能を有効にした Sales Cloud の標準機能で進められます。
  • 在庫、納品書、請求書、赤伝票、仕訳の自動作成は ERP Platform で補えます。
  • 会計ソフトとは CSV でつなぎ、API の連携はありません。
  • 自社で作る商品の原価集計、販売の外貨、仕入先別の単価、有効期限は、いまはできません。
  • 迷ったら30日間の無料トライアルで、1件通して確かめてください。

よくある質問

Salesforce の標準機能だけで販売管理はできますか?

見積機能を有効にした Sales Cloud の標準機能で、商談から見積を作り、見積書を PDF にするところまでは進められます。在庫の引当、納品書、請求書、会計仕訳まで通すには、ERP Platform のようなアドオンが要ります。

ERP Platform の仕訳を会計ソフトに渡せますか?

API での直接連携はありません。仕訳は Salesforce 上で自動作成され、会計ソフトへは CSV で出力して取り込みます。

外貨建ての取引には使えますか?

仕入は登録した通貨で扱えます。販売は円のみで、外貨建ての販売には使えません。

導入前に試す方法はありますか?

30 日間の無料トライアルがあり、本番の契約の前に Sandbox で試すこともできます。利用には Sales Cloud の Enterprise エディション以上が必要です。


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