営業は Salesforce で見積を作ります。受注が決まると、経理が請求システムを開き、同じ内容を手で入力します。見積と請求で金額や条件が食い違い、確認の手間も増えていきます。

結論から言うと、この手入力をなくす方法は大きく3つあります。会社の体制によって向く方法が違います。この記事では3つの違いと、Salesforce の上で請求書まで発行する場合の流れを整理します。

なぜ見積から請求書への手入力が残るのか

理由は、Sales Cloud の標準の見積機能が、請求書の発行までは対象にしていないからです。納品や請求の記録を持つ場所を、別に用意する必要があります。受注後の情報は、どこか別の場所で管理することになります。

受注後のデータを置く場所がない

請求書を作るには、何をいつ納品したかの記録が要ります。標準ではこの記録を持たないため、請求システムや表計算ソフトに、見積の内容をもう一度入力することになります。

見積と請求で条件がずれやすい

見積の時点では、取引先ごとの掛率、個別案件の価格、代理店経由かどうかを決めています。この条件を、請求側でも同じように再現する必要があります。入力のたびに、ずれが生まれる余地があります。

確認の作業が経理に集まる

金額が合わないとき、経理は営業に見積の内容を問い合わせます。営業は商談を開いて確かめます。同じ情報を2か所で持つと、こうした確認のやりとりが日常的に発生します。

販売管理の全体像は、Salesforce で販売管理を完結させる方法でも整理しています。

見積を請求書につなぐ3つの方法

一般的な手法として、次の3つがあります。どれが正解ということはなく、取引量や社内の体制で選びます。

方法1:転記や CSV で運ぶ

Salesforce から見積の内容を CSV などで出し、請求システムに取り込みます。手で転記する場合もあります。始めやすい反面、受注のたびに作業が発生します。受注の件数が少ないうちは、現実的な選択です。

方法2:Salesforce と請求システムをつなぐ開発

Salesforce と請求システムの間に、データを渡す仕組みを開発します。作業は減りますが、開発と保守の費用がかかります。どちらかの仕様が変わると、直す必要も出ます。使い慣れた請求システムを変えられない会社に向きます。

方法3:Salesforce の上で請求書まで発行する

納品や請求のデータを Salesforce の中に持ち、そこから請求書を発行します。データの置き場所が1つになります。そのぶん、請求の運用を Salesforce に移す準備が要ります。

方法 向く会社 注意点
転記や CSV 受注の件数が少ない会社、まず試したい会社 受注のたびに作業が残る
連携開発 既存の請求システムを変えられず、開発の体制がある会社 開発と保守の負担が続く
Salesforce 上で発行 見積から請求までを1つのデータでつなぎたい会社 請求の運用を移す準備が要る

選ぶときの見方

  • 今の請求システムを使い続ける必要があるか。あるなら、方法1か方法2です。
  • 開発や保守を担える人がいるか。いないなら、方法2は負担が大きくなります。
  • 見積から請求までを、1つのデータで見たいか。そうなら、方法3が合います。

ERP Platform for Salesforce での流れ

方法3にあたるのが、AppExchange のアプリ「ERP Platform for Salesforce」です。Sales Cloud へのアドオンとして動き、製品ページで機能を紹介しています。見積から仕訳までの流れは次のとおりです。

  1. 見積を作る:テンプレートと掛率を自動で適用し、見積書をメールで送れます。取引先・商品別の掛率(Tier)を使えます。見積の明細には Markup Price の項目もあります。
  2. 見積を Lock して在庫を確保する:見積には Lock の項目があり、商談商品では在庫確保状況(未確保・一部確保・確保完了)と在庫確保数を管理します。在庫は倉庫(在庫場所)ごとに持てます。
  3. 納品レコードを作る:納品レコードを Salesforce 上で作成します。
  4. 請求書を作る:すべての商品の納品レコードが作成された時点で、請求書が作成されます。出荷の完了前でも、納品レコードがあれば発行できます。取引先ごとに設定した締め日で、締め処理も自動で走ります。
  5. 仕訳を作る:取引の発生と同時に、借方・貸方の仕訳が Salesforce 上に自動で作られます。

見積から請求書までを同じ Salesforce で扱うため、別の請求システムに入力し直す場面は減ります。帳票の発行については、見積書・納品書・請求書を発行する方法に詳しく書いています。

見積の条件と代理店経由の管理

商談には代理店(Reseller)と請求先・納品先を持つ項目があり、代理店経由かどうかを Reseller_Flag で管理します。取引先別の掛率は、商談作成時に適用されます。請求書にはロゴと社印を登録できます。営業と経理が、同じ Salesforce 上で見積から請求までを扱えます。

返品や会計ソフトへの渡し方

返品のときは、赤伝票(返還請求書)を発行します。返却あり(返却先の倉庫を選びます)、返却なし、廃却から選べます。

仕訳は CSV で出力して、会計ソフトに取り込みます。会計ソフトと直接つながる機能はありません。取引先別・期間別の売掛・買掛残高の集計は、Salesforce 上で見られます。

商談ごとの利益も見られる

商談ごとに、仕入原価と営業経費が集計されます。利益はダッシュボードで確認できます。

向かないケース

この方法が合わない会社もあります。導入前に、次の点を確認してください。

  • 自社で商品を作る工程の管理が必要な会社:原価の集計は仕入原価までです。労務や外注にかかる費用を積み上げる原価計算はできません。
  • 会計ソフトと直接つなぎたい会社:渡し方は CSV の取り込みです。
  • 販売側で外貨を使う会社:販売側の通貨は日本円のみです。
  • Sales Cloud の Enterprise エディション未満の会社:標準の「見積」オブジェクトを使うため、Enterprise 以上が必要です。Service Cloud 単体では使えません。

対象は、販売業・商社・卸売・小売・EC 運営の、受注、納品、請求の流れです。サービス業は帳票用途での利用になります。自社の業務がこの流れに当てはまるかを、先に確認してください。

まず試すには

月額は1ユーザーあたり2,000円で、30日間の無料トライアルがあります。AppExchange からインストールできます。本番の組織に入れる前に、Sandbox での試用をおすすめします。

テスト用の見積を1件作り、納品レコード、請求書、仕訳まで流してみてください。今の手入力と比べて、何が変わるかを確かめられます。サポートはメールと Web 会議で受けられます。料金の詳細は料金ページにあります。

まとめ

手入力が残るのは、Sales Cloud の標準の見積だけでは、請求書の発行までは扱えないからです。

  • つなぐ方法は、転記や CSV、連携開発、Salesforce 上での発行の3つです。
  • 見積から請求までを1つのデータでつなぎたいなら、方法3が合います。
  • ERP Platform では、見積、Lock と在庫確保、納品レコード、請求書、仕訳の順で進みます。
  • 会計ソフトとは CSV で取り込みます。販売側は日本円のみです。

二重運用を減らす考え方は、Sales Cloud の二重運用を解消する方法も参考になります。

よくある質問

Salesforce の見積は標準機能で請求書にできますか?

Sales Cloud の標準の見積だけでは、請求書までは作れません。請求書にするには、転記、連携開発、または請求まで扱うアプリが必要です。

請求書は出荷が終わる前でも発行できますか?

できます。ERP Platform では、すべての商品の納品レコードが作成された時点で請求書が作成されます。出荷の完了前でも、納品レコードがあれば発行できます。

会計ソフトにはどうやって仕訳を渡しますか?

取引の発生と同時に Salesforce 上へ仕訳が作られます。これを CSV で出力し、会計ソフトに取り込みます。会計ソフトと直接つながる機能はありません。


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