返品が出たときは、赤伝票で元の取引を打ち消し、請求・在庫・仕訳を同じ内容でそろえて戻すのが基本の流れです。どれか1つだけ戻して他が残ると、請求額と在庫数と帳簿の数字がずれます。
Salesforce 上で販売管理システムや在庫管理システムの役割を持たせていても、返品の処理は「請求書を直す」「倉庫に戻す」「経理に伝える」が別々の作業になりがちです。この記事では、返品後に請求・在庫・仕訳をどう戻すかを、まず業務の流れとして整理します。そのあとで、ERP Platform for Salesforce で確認できる範囲と、EC 経由の返品での注意点を説明します。
商品を仕入れて売る販売業・商社・小売の、営業事務、経理、情シスの方に向けた内容です。税務上の扱いは会社ごとの判断になるため、ここでは触れません。
赤伝票とは:返品や訂正をマイナスの伝票で記録する方法
赤伝票は、すでに発行した取引を取り消したり訂正したりするときに、マイナスの金額で起こす伝票です。元の伝票を書き換えるのではなく、打ち消す伝票を別に残します。元の取引と打ち消しの両方が履歴に残るため、あとから経緯をたどれます。
返品はその代表的な場面です。たとえば10個納品して請求した商品のうち2個が返品されたら、2個分のマイナスの伝票を起こします。請求済みの伝票を直接直すと、顧客に送った請求書と社内の記録が食い違ってしまいます。
ただし、赤伝票を起こしただけでは、請求書も在庫も帳簿も戻りません。それぞれを同じ内容で戻す作業が別に必要です。次の章で、何を戻すのかを整理します。
返品で戻すべきもの:請求・在庫・仕訳
返品が出たときに、そろえて戻すのは次の3つです。
- 請求:返品分の金額を、顧客への請求から差し引きます。請求済みなら、返品分を示す帳票を顧客に出します。
- 在庫:返品された商品が手元に戻るなら、どの倉庫に戻すかを決めて在庫を増やします。販売できる状態かどうかも確かめます。
- 仕訳:返品した分の売上を取り消す仕訳を、帳簿に反映します。掛売りか現金売上かなど、取引の条件によって相手の科目が変わります。在庫が戻る場合は、在庫側の動きも帳簿に反映します。
表計算ソフトと会計ソフトで運用していると、この3つを別々の担当者が別々のファイルで直すことになります。返品の件数が増えると、次のようなずれが起きます。
- 請求は直したのに、在庫が戻っていない。
- 在庫は戻したのに、請求書は元の金額のまま顧客に残っている。
- どちらも直したが、仕訳の取消が月末まで漏れている。
ずれを防ぐには、返品を受けた時点で「どの伝票を打ち消し、どこに戻すか」を1か所で決め、請求・在庫・仕訳が同じ元データから動く形にすることです。月末にまとめて直す運用は、件数が増えるほど漏れが出やすくなります。
返品の扱いは3通り:返却あり・返却なし・廃却
返品といっても、商品の行き先によって在庫の扱いが変わります。実務では次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 扱い | 商品の行き先 | 在庫で決めること |
|---|---|---|
| 返却あり | 手元に戻ってくる | どの倉庫に戻すか |
| 返却なし | 顧客の手元に残る(贈与など) | 在庫は戻さない |
| 廃却 | 廃却として処理する | 廃却処理を選ぶ |
返却ありの場合は、戻す先の倉庫を決めます。倉庫が複数あると、元の出荷元とは別の倉庫に戻したい場面もあります。返却なしは、商品が顧客の手元に残るため、在庫を戻す作業は発生しません。廃却は、戻ってきた商品を在庫として扱わず、廃却として処理するケースです。
3つのどれにあたるかを返品の受付時点で決めておくと、あとで在庫数と帳簿の数字が合わなくなる事態を防げます。返金や値引きをどうするかは、この3つとは別に、取引先との合意で決めます。
ERP Platform for Salesforce で確認できる赤伝票と返還請求書
ERP Platform for Salesforce では、返品・キャンセル処理として赤伝票を発行できます。返品時のオプションは、返却あり(返却先の倉庫を選択)、返却なし(商品は顧客に贈与)、廃却処理の3つです。前の章の3通りは、この選択肢に合わせて整理したものです。
赤伝票の関連項目には、返却先の在庫場所や在庫の返却日を管理するものがあります。請求明細には返品可能数の項目もあります。これらの項目が実際の画面でどう使えるかは、トライアルで確かめてください。
帳票としては、見積書・注文書・納品書・請求書に加えて、返還請求書を標準で出力できます。返還請求書には、返品処理からワンクリックで対応できると製品ページで案内しています。
仕訳については、仕入・請求・返品・社内使用といった取引の発生と同時に、会計仕訳が Salesforce 上で自動作成されます。作成した仕訳は CSV で出力して、会計ソフトへ取り込む運用です。会計ソフトと API で直接つながる機能はありません。
赤伝票を発行したとき、請求・在庫・仕訳が具体的にどこまで戻るかは、この記事では断定しません。次の点を導入前に実際の画面で確かめてください。
- 返品の3通り(返却あり・返却なし・廃却)を、自社の返品ケースに当てはめて、どれを使うか決めます。
- 一部だけの返品(10個のうち2個)の場合に、請求と在庫がどう動くかを確かめます。
- 返還請求書の出力内容が、顧客に送る書面として足りるか確かめます。
- 仕訳の CSV を会計ソフトに取り込んで、勘定科目が自社の運用に合うか確かめます。
EC サイト経由の返品は、赤伝票の範囲が限られる
EC サイト経由の受注は扱いが異なります。EC コネクターを使う場合、請求書や納品書は EC サイト側で発行する前提で、Salesforce は在庫・売上・会計仕訳を裏側で管理する役割です。
返品時の赤伝票も、Salesforce 側の在庫処理のために発行するものです。顧客に出す請求書や納品書は EC サイト側で扱うため、返品に伴う顧客向けの対応を決めるときは、EC サイト側の運用も合わせて確認してください。
Sales Cloud の Enterprise エディション以上があれば、AppExchange から30日間無料で試せます。月額は1ユーザー2,000円です。機能は製品ページ、料金は料金ページにあります。
まとめ
- 返品は、赤伝票で元の取引を打ち消し、請求・在庫・仕訳をそろえて戻します。
- どれか1つだけ戻すと、請求額・在庫数・帳簿の数字がずれます。
- 商品の行き先は、返却あり・返却なし・廃却の3通りで考えると整理しやすくなります。
- ERP Platform では、赤伝票の発行と返還請求書の出力、返品を含む取引の会計仕訳の自動作成に対応しています。
- EC 経由の返品では、赤伝票は Salesforce 側の在庫処理のために発行するものです。
よくある質問
赤伝票とは何ですか?
すでに発行した取引を取り消したり訂正したりするときに、マイナスの金額で起こす伝票です。元の伝票は書き換えず、打ち消す伝票を別に残すため、経緯があとからたどれます。
返品の扱いにはどんな種類がありますか?
ERP Platform では、返却あり(返却先の倉庫を選択)、返却なし(商品は顧客に贈与)、廃却処理の3つを選べます。商品の行き先に合わせて使い分けます。
返品したときの会計仕訳はどうなりますか?
返品を含む取引の発生と同時に、会計仕訳が Salesforce 上で自動作成されます。会計ソフトへは CSV 出力で取り込む運用で、API での直接のつなぎ込みはありません。
EC サイト経由の返品も赤伝票で処理できますか?
返品時の赤伝票は、Salesforce 側の在庫処理のために発行します。請求書や納品書は EC サイト側で発行する前提のため、顧客向けの対応は EC サイト側の運用も確認してください。
返品処理の機能を試すにはどうすればよいですか?
Sales Cloud の Enterprise エディション以上があれば、AppExchange から30日間無料で試せます。月額は1ユーザー2,000円です。