Salesforce で取引先ごとの掛率を管理するなら、取引先ごとに価格表を増やすより、取引先に Tier(掛率の段階)を持たせて商談に自動適用する形が運用しやすくなります。標準の価格表は、商談や見積ごとに 1 つの価格表を選んで商品を追加する仕組みです。標準の価格表には、取引先ごとの掛率を商談へ自動で当てはめる機能はありません(Sales Cloud の標準の価格表の範囲での説明です)。

ERP Platform for Salesforce は、Tier 1〜10 の10段階の掛率を商品ごとに登録し、取引先に紐づけた Tier の掛率を商談の価格に適用します。この記事では、標準の価格表で何が起きるかを公式ヘルプに沿って確かめたうえで、掛率で持つ設計と、向かないケースを整理します。

代理店や取引先ごとに卸値が違う卸・商社・販売業の、情シス、経営企画、経理の方に向けた内容です。

標準の価格表で取引先別の価格を持つと起きること

Salesforce には価格表があります。標準価格表に商品の標準価格を置き、カスタム価格表に商品ごとのリスト価格を持たせる仕組みです。国内用と海外用のように、価格のセットを分けて持つ使い方が想定されています。

これを「取引先ごとの価格」に流用すると、次の点で運用が重くなります。

  • 商談や見積に追加できる商品は、1つの価格表からだけです。取引先ごとに価格表を分けても、1つの商談で複数の価格表を混ぜることはできません。
  • 商品が入った商談で価格表を変更すると、商品の関連リストからすべての商品が削除されます(商談の金額項目の値は残ります)。取引先の取り違えに気づいて価格表を直すと、明細を入れ直すことになります。
  • 価格はカスタム価格表ごとに商品へ紐づけて持ちます。取引先が増えるほど、また商品が増えるほど、保守する価格の数が増えます。価格改定のたびに、該当する価格表をすべて直す作業が残ります。
  • 標準価格表から商品を削除すると、その標準価格はすべてのカスタム価格表からも削除されます。商品の整理が、価格表に載った価格にも波及します。

価格表そのものは、価格のセットを分ける目的には向いています。ただ、「A社は定価の90%、B社は80%」を取引先の数だけ価格表で表現する使い方は、保守の負担が営業事務や情シスに残りがちです。

取引先×掛率で持つという考え方

卸値の違いを、商品の価格そのものではなく「定価に対する比率」で持つ方法です。商品には定価を持たせ、Tier ごとの掛率を商品別に登録し、取引先には該当する Tier を割り当てます。

こうすると、取引先ごとに価格表を作る必要がなくなります。取引先ごとに価格を持たない分、定価を見直したときの修正箇所が減ります。新しい取引先が増えたときは、取引先に Tier を割り当てます。

ERP Platform for Salesforce の Tier 機能では、たとえば商品 X に次のように掛率を置きます。数値は説明のための例です。

  • Tier 1:100%(定価販売)
  • Tier 2:95%(取引年数の長い販売店)
  • Tier 4:85%(月間の発注量が多い販売店)

商談に紐づく取引先の Tier に応じて、該当する掛率の価格が自動で適用されます。営業が「これは代理店価格で」と毎回指示する必要はありません。

Tier の仕組みの全体像は、Salesforce で販売管理を完結させるで説明しています。この記事では、掛率の設計と運用に絞ります。

掛率が決まらない案件の扱い

すべての案件が Tier に乗るわけではありません。入札案件、特注品、スポット販売のように、案件ごとに価格が変わるものがあります。

この場合は、見積の明細にある Markup Price の項目で、案件ごとの価格を持たせます。上書き時に仕入原価や粗利の計算がどう動くかは、設定によるため導入前に確認してください。粗利の見方は原価と粗利を商談ごとに把握する方法で扱っています。

もう一つ、送料などを加えてから掛率を計算したい場合には、特殊掛率の設定があります。商品価格に送料を足してから掛率を計算するといった、計算の前後に金額を調整する設定です。

代理店経由の販売では、商談に代理店(Reseller)と請求先・納品先を持つ項目があり、代理店経由かどうかを Reseller_Flag で管理します。代理店向けの価格がどう決まるかは、導入前に確かめてください。関連する機能はSalesforce で販売管理を完結させるにまとめています。

掛率を決める前に整理しておくこと

ツールを入れる前に、社内の取り決めを4点そろえておくと、設定が速く進みます。

  • 取引先をいくつの段階に分けるか。Tier は10段階ありますが、最初から使い切る必要はありません。3〜4段階で始めて、足りなければ増やす進め方が無理がありません。
  • 各段階の掛率を誰が決め、誰が見直すか。営業が個別に決めるのか、経営企画が年に何回か見直すのかを決めておきます。
  • 例外の扱い。Tier に乗らない案件を、誰の判断で Markup Price にするかを決めておきます。
  • 取引先と Tier の対応。Tier の価格は、取引先に正しい Tier が入っていることが前提です。取引先の一覧を見直し、どの段階に当たるかを最初に割り当てます。この作業は価格表で運用する場合にも必要です。

掛率で持つ設計は、決めた内容をマスタに一度置けば、商談のたびに営業が思い出す必要がなくなる点が違います。

できないこと・向かないケース

導入前に、次の点を確かめてください。

ケース 現状
EC コネクター経由の受注 EC サイト側の価格が適用され、掛率は効きません。EC コネクターは受注の取り込み用です。
会員区分ごとの価格設定 未対応です。

数量に応じた段階価格や掛率の適用期間は、公開している機能説明に含まれていません。必要な場合は、トライアルで自社の条件を確かめてください。

また、掛率で持つ設計は、価格が「定価に対する比率」で表せる商売に向きます。取引先ごと・商品ごとに価格が完全に個別で、比率でまとめられない場合は、Markup Price での個別入力が中心になります。その場合、掛率の恩恵は小さくなります。EC サイトを運営している会社は、EC 経由の受注と、営業が商談で受ける受注とで価格の決まり方が分かれる点を、先に社内で確認しておくと安心です。

まず試すには

ERP Platform for Salesforce は、Sales Cloud の Enterprise エディション以上で使えるアドオンです。月額は1ユーザー2,000円で、30日間の無料トライアルがあります。本番契約の前に、Sandbox で試すこともできます。

掛率の確認は、小さく始めるのが現実的です。

  1. 代表的な取引先を3社ほど選び、Tier を割り当てます。
  2. 主力商品を数点選び、Tier ごとの掛率を設定します。
  3. テスト商談を作り、取引先ごとに価格が自動で変わることを確かめます。
  4. 請求先と納品先が違う商談で、代理店(Reseller)の項目と価格がどう動くかを確かめます。
  5. 掛率に乗らない案件を想定し、Markup Price で価格を上書きしたとき、粗利の表示がどう動くかを確かめます。

料金の詳細は料金ページ、機能の一覧は製品ページにあります。ライセンスの追加は、当社の担当者が対応します。

まとめ

  • 標準の価格表では、1つの商談で使える価格表は1つで、変更すると商品が削除されます。
  • 取引先ごとに価格表を増やすと、価格改定の保守が重くなります。
  • ERP Platform は、Tier 1〜10 の掛率を取引先の Tier に応じて商談へ自動適用します。
  • 掛率に乗らない案件は、見積明細の Markup Price で案件ごとの価格を持たせます。
  • EC コネクター経由の受注には掛率が効きません。会員区分別の価格にも未対応です。

よくある質問

Salesforce の価格表で取引先ごとの価格を持てますか?

価格表を取引先ごとに分けることはできます。ただし、商談や見積に追加できる商品は1つの価格表からだけで、価格表を変更すると商品の関連リストから商品がすべて削除されます。取引先が増えるほど価格改定の保守も増えます。

掛率に乗らない案件はどう扱いますか?

見積の明細にある Markup Price の項目で、案件ごとの価格を持たせます。上書きしたときに仕入原価や粗利の計算がどう動くかは設定によるため、導入前に確認してください。

EC サイト経由の受注にも掛率は効きますか?

効きません。EC コネクター経由の受注には EC サイト側の価格が適用され、掛率は無視されます。会員区分ごとの価格設定にも未対応です。

掛率の機能を試すにはどうすればよいですか?

Sales Cloud の Enterprise エディション以上があれば、AppExchange から30日間無料で試せます。本番契約の前に Sandbox で試すこともできます。月額は1ユーザー2,000円です。


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